猫が吐くこと自体は珍しくありませんが、「猫はよく吐く動物だから」と繰り返す嘔吐をそのままにしない方がよい場合があります。特に、吐く回数が増えた、体重が減っている、食欲が落ちている、下痢がある、元気がない場合は、食事だけの問題とは限りません。

猫の嘔吐では、まず本当に「嘔吐」なのか、食道から内容物が戻る「吐出」なのかを分けて考えます。そのうえで、胃腸の病気だけでなく、腎臓病、肝胆道疾患、甲状腺機能亢進症なども候補に入ります。

「よく吐く=体質」とは限りません

慢性的な嘔吐、下痢、体重減少があり、超音波検査で小腸壁の肥厚が確認された猫100頭を調べた研究では、99頭に慢性小腸疾患が認められ、主な診断は慢性腸炎と腸リンパ腫でした。

この研究は、すべての「よく吐く猫」に重大な病気があるという意味ではありません。ただし、慢性的・反復性の嘔吐を「猫だから普通」と決めつけないことの根拠になります。

嘔吐と吐出は違います

嘔吐では、吐く前に気持ち悪そうにする、よだれが出る、お腹が大きく動くなどの様子がみられることがあります。

吐出では、食後比較的すぐに、前触れや強い腹部運動が少ないまま未消化の食べ物が出ることがあります。

実際には動画を撮っておくと、診察時に区別しやすくなります。

食後すぐに未消化のフードを吐くとき

早食い、食道の問題、胃内容の排出異常など、いくつかの原因が考えられます。

「カリカリをそのまま吐いたから、フードが合わない」とは限りません。食べてから何分・何時間後か、腹部の動きがあったか、吐いたものの形状などを確認します。

毛玉を吐くのも、頻繁なら確認します

毛玉を吐くことは猫でみられますが、頻繁な毛玉吐出の背景に、毛づくろいの増加や消化管運動の異常などが隠れていることがあります。

特に短毛の猫で毛玉を頻繁に吐く、嘔吐回数が増えている、体重減少などがある場合は、毛玉だけの問題と決めつけず診察を検討します。

猫が吐く原因は胃腸だけではありません

慢性嘔吐の原因には、慢性腸症、食物有害反応、消化管運動異常、腫瘍などの消化器疾患だけでなく、腎疾患、肝胆道疾患、甲状腺機能亢進症などの消化管以外の病気もあります。

そのため、繰り返す場合は、年齢や症状に応じて血液検査、尿検査、超音波検査、便検査などを組み合わせます。

食事を見直す価値がある場合

診察・検査で緊急性の高い原因を除外したうえで、食事の量、脂質、たんぱく源、食物繊維、食事回数、切り替え方などを見直すことがあります。

猫の慢性腸症には、食事変更に反応する症例があります。ただし、どの猫にも同じ食事が合うわけではありません。

手作りご飯では、食材、脂質量、水分量、食事回数などを個別に調整しやすいことが利点です。一方で、嘔吐の原因診断をせずに食事だけで様子を見ることはおすすめしません。

下痢・嘔吐と食事の関係について詳しく見る

このような場合は早めに診察を

  • 短時間に何度も吐く
  • 水を飲んでも吐く
  • 食欲がない、元気がない
  • 体重が減っている
  • 血が混じる
  • 異物を食べた可能性がある
  • 下痢や腹痛もある
  • 子猫・高齢猫・持病のある猫

特にぐったりしている、呼吸状態がおかしい、強い腹痛があるなどの場合は、食事相談より診察を優先します。

猫の嘔吐と食事をオンラインで相談できます

チップ宝塚動物栄養クリニックでは、かかりつけ動物病院での検査結果、吐く頻度やタイミング、現在の食事内容、体重変化などを確認しながら食事を考えます。

オンライン栄養相談は全国からご利用いただけます。慢性的に吐く、フードを変えても繰り返す、手作りご飯を検討したいといったご相談にも対応しています。

オンライン栄養相談について詳しく見る

よくある質問

猫が毎日吐くのは普通ですか?

毎日、または繰り返し吐く状態を「猫だから普通」とは考えません。慢性腸症や腎疾患、甲状腺機能亢進症などが隠れていることがあります。

猫が食べてすぐ未消化のフードを吐きます

嘔吐ではなく吐出の場合もあります。食後どのくらいで起きたか、腹部の強い動きがあったか、内容物の形状などを記録し、繰り返す場合は診察をおすすめします。

毛玉を吐くだけなら大丈夫ですか?

時々みられることはありますが、頻繁な場合は毛づくろいの増加や消化管の問題が背景にないか確認します。

食事を変えれば吐かなくなりますか?

食事変更が有効な症例はありますが、原因によっては食事だけでは改善しません。繰り返す場合は、まず原因を評価します。

参考文献

  1. Norsworthy GD, Estep JS, Kiupel M, Olson JC, Gassler LN. Diagnosis of chronic small bowel disease in cats: 100 cases (2008-2012). J Am Vet Med Assoc. 2013;243(10):1455-1461. doi:10.2460/javma.243.10.1455.
  2. Hauck SR, Gisselman K, Cordner A, Gasser Nicholson A. Chronic Vomiting in Cats: Etiology and Diagnostic Testing. J Am Anim Hosp Assoc. 2016;52(5):269-276. doi:10.5326/JAAHA-MS-6290.
  3. Marsilio S. Feline chronic enteropathy. J Small Anim Pract. 2021;62(6):409-419. doi:10.1111/jsap.13332.

執筆・監修:獣医師 木村菜帆子/チップ宝塚動物栄養クリニック
最終更新:2026年10月