「猫に手作りご飯を食べさせたいけれど、何から始めればいいかわからない」「作ってみたけれど食べてくれない」「何をどれくらい食べさせればいいのかわからない」というご相談は少なくありません。

猫の手作りご飯は、食材、水分量、脂質、ミネラルなどをおうちの猫に合わせて調整しやすい食事方法です。一方で、肉や魚を中心にしただけでは、長期的に必要な栄養素が十分とは限りません。

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大切なのは、手作りご飯を難しく考えすぎることでも、インターネット上のレシピをそのまま続けることでもありません。おおよその必要量や栄養バランスを見ながら、実際に食べられる内容に組み立てることです。

猫の手作りご飯は、何から始めればいい?

健康状態に大きな問題がなく、現在の食事を食べられている猫であれば、最初から食事をすべて切り替える必要はありません。

まずは、加熱した肉や魚など、猫が受け入れやすい食材をごく少量から試します。新しい食事を警戒する猫もいるため、これまでの食事と混ぜるより、別のお皿で少量を提示した方が受け入れやすい場合もあります。

猫では、これまでに経験した味やにおいが、その後の食べ物の好みに影響することが報告されています。特に若いうちから複数の食材や食感を経験しておくことには意味があります。ただし、成猫でも少しずつ慣らしていくことは可能です。
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食べないからといって、空腹になるまで他の食事を出さない方法はおすすめしません。猫では食欲低下が続くこと自体が問題になるため、食べられる量を確保しながら進めます。

「肉を中心にすれば大丈夫」ではありません

猫は真性肉食動物で、犬や人とは栄養代謝が異なります。たんぱく質の必要量が比較的高く、タウリン、アルギニン、アラキドン酸、食事由来のビタミンA(レチノールなど)など、食事から確保することが重要な栄養素があります。

一方で、肉だけ、魚だけ、内臓だけといった食事を長期間続けると、カルシウムとリンのバランス、ビタミン、微量ミネラルなどが不足または過剰になる可能性があります。

2019年に発表された猫の手作り食レシピ114件の評価では、解析可能だったレシピの多くで栄養上の不足が確認され、評価対象となった栄養素すべてを推奨量の範囲で満たしたレシピはありませんでした。これは「手作りご飯が危険」という意味ではありません。毎日の主食として長く続ける場合は、使っている食材だけで判断せず、全体として栄養バランスに大きな偏りがないか確認しておくことが大切です。

猫の手作りご飯で確認したい栄養素

実際の設計では、エネルギー、たんぱく質、脂質だけでなく、必須アミノ酸、必須脂肪酸、カルシウム、リン、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、亜鉛、銅、鉄、ヨウ素、セレン、各種ビタミンなどを確認します。

特に猫では、タウリンなど犬とは必要性の考え方が異なる栄養素があります。食材だけで十分量を安定して確保することが難しい場合は、必要な栄養素を補う方法も検討します。

「食材の種類をたくさん増やせば栄養バランスが整う」とは限りません。毎回細かく計算する必要はありませんが、長く続ける食事では、全体として必要な栄養素が大きく不足・過剰になっていないかを確認しておくことが大切です。
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手作りご飯は何グラム食べさせればいい?

猫の食事量は、体重だけで一律に「○g」と決めることはできません。同じ4kgの猫でも、年齢、避妊去勢、活動量、筋肉量、現在の体型、疾患、使用する食材のエネルギー密度によって必要量が変わります。

そのため、体重や体型、活動量などからおおよその必要量を考え、実際の体重・体型・筋肉量の変化を見ながら食事量を調整していきます。厳密な計算だけで決めるのではなく、実際のおうちの猫の変化を見ることも重要です。

「何グラム食べているか」だけではなく、その量で体重や体型が維持できているか、食事全体に大きな偏りがないかも一緒に見ていきます。
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手作りご飯を食べてくれないとき

猫では、味だけでなく、におい、温度、食感、食材の形状、これまでの食経験などが食べるかどうかに影響します。

最初から細かく混ぜ込まず、肉や魚を単体で少量提示して反応を見る、加熱方法や大きさを変える、冷たいままではなく香りが立つ程度に温度を調整するなど、何を好むかを確認していきます。

ただし、以前は食べていたのに急に食べなくなった、体重が減っている、嘔吐や下痢がある、元気がないといった場合は、単なる好みの問題とは限りません。先に診察や検査が必要です。
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病気がある猫では、同じレシピを使い回しません

慢性腎臓病、尿石症、消化器疾患、糖尿病、皮膚疾患などがある場合は、健康な猫と同じ考え方で食事を組み立てないことがあります。

たとえば慢性腎臓病では、病期、血液検査、尿検査、リン、カリウム、体重、筋肉量、食欲などを確認して食事を調整します。尿石症では、ストルバイトとシュウ酸カルシウムで考え方が同じではありません。
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病名だけで一律のレシピを当てはめるのではなく、検査結果と現在の食事を一緒に評価することが重要です。

生肉ではなく、まず加熱した食材から

手作りご飯は生食である必要はありません。生肉には細菌などの衛生上のリスクがあり、骨では消化管障害や歯の損傷につながる可能性もあります。当院では、特別な理由がなければ、まず加熱した食材を使う方法を基本に考えます。

こんなときは個別の栄養設計がおすすめです

  • 何をどのくらい食べさせればよいかわからない
  • 手作りご飯を作っても食べてくれない
  • 体重が減ってきた、または太りやすい
  • 慢性腎臓病、尿石症、消化器疾患、皮膚疾患などがある
  • 療法食を食べてくれない
  • 現在の手作りご飯で栄養が足りているか確認したい
  • 検査結果に合わせて食事を調整したい

チップ宝塚動物栄養クリニックでは、現在の食事内容、体重、体型、筋肉量、既往歴、検査結果などを確認し、おうちの猫に合わせて食事を組み立てます。

オンライン栄養相談は全国からご利用いただけます。すでにかかりつけ動物病院で検査を受けている場合は、その結果をもとに食事内容を一緒に確認することもできます。

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よくある質問

猫の手作りご飯は毎日与えても大丈夫ですか?

食事全体として必要な栄養が大きく不足・過剰にならないように組み立てれば、毎日の食事として続けることは可能です。毎回細かく計算する必要はありませんが、肉や魚だけなど、内容が偏った固定メニューを長期間続けることはおすすめしません。

猫の手作りご飯に野菜は必要ですか?

猫の栄養設計で、野菜を必ず使用しなければならないわけではありません。使用する場合も、必要な栄養素、消化性、便の状態、疾患などを見ながら量を決めます。

サプリメントは必要ですか?

使用する食材だけで必要量を安定して満たしにくい栄養素があれば、補助的に使用することがあります。すべての猫に同じサプリメントが必要という意味ではありません。

ドライフードからすぐに手作りご飯へ変えてもいいですか?

猫によって食事の変化への反応が異なります。現在の食事を食べられている場合は、少量から新しい食材への反応を確認しながら進めます。食欲が落ちている猫や疾患のある猫では、切り替え方も個別に考えます。

腎臓病や尿石の猫でも手作りご飯はできますか?

可能な場合がありますが、健康な猫と同じレシピをそのまま使うことはおすすめしません。検査結果、病期、結石の種類、食欲、体重などを確認して設計します。

参考文献

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執筆・監修:獣医師 木村菜帆子/チップ宝塚動物栄養クリニック
最終更新:2026年10月