【犬猫の皮膚病は、皮膚だけ見ても分からないことがあります】

犬猫の皮膚病というと、

かゆい。

赤い。

耳が汚れる。

毛が抜ける。

ベタつく。

フケが出る。

においがする。

このような症状が目につきます。

皮膚に症状が出ているので、皮膚だけの問題だと思われやすいです。

しかし、皮膚病は、皮膚だけを見ても分からないことがあります。

皮膚は体の外側にある臓器です。

そして、皮膚は体の内側の状態を映す場所でもあります。

感染、アレルギー、寄生虫、ホルモン、免疫、生活環境、食事、栄養状態。

さまざまな要因が、皮膚に症状として出てくることがあります。

〈犬猫の皮膚疾患は、大きく分けて考える〉

皮膚病を診る時には、まず原因を大きく分けて考えます。

たとえば、次のような分類です。

・感染性の皮膚病

・寄生虫による皮膚病

・アレルギー性の皮膚病

・内分泌疾患に関係する皮膚病

・自己免疫性の皮膚病

・腫瘍性の皮膚病

・栄養性の皮膚病

・環境や生活習慣に関係する皮膚トラブル

もちろん、実際の症例では一つだけが原因とは限りません。

アレルギーが背景にあり、二次的に細菌感染やマラセチアが増えていることもあります。

皮膚バリアが乱れて、外耳炎や膿皮症を繰り返すこともあります。

栄養状態や食事内容が合わず、皮膚の回復が遅くなっていることもあります。

そのため、皮膚病では「何が一番悪いのか」を一つだけ探すのではなく、関係している要因を整理していくことが大切です。

〈感染性の皮膚病〉

犬猫では、細菌や真菌が関係する皮膚病があります。

代表的なものに、膿皮症、マラセチア性皮膚炎、マラセチア性外耳炎、皮膚糸状菌症などがあります。

細菌やマラセチアは、皮膚に症状を起こすことがあります。

ただし、細菌やマラセチアが増えているからといって、それだけが根本原因とは限りません。

なぜ増えやすい皮膚になっているのか。

なぜ繰り返すのか。

なぜ薬を使うとよくなるのに、また戻るのか。

ここまで考える必要があります。

感染だけを治療しても、背景にある皮膚バリア、アレルギー、皮脂、耳の構造、食事内容、栄養状態が変わらなければ、再発を繰り返すことがあります。

〈寄生虫による皮膚病〉

ノミ、ダニ、疥癬、毛包虫など、寄生虫が皮膚症状の原因になることがあります。

かゆみが強い場合、まず除外したい原因の一つです。

特にノミアレルギー性皮膚炎では、少数のノミでも強いかゆみが出ることがあります。

寄生虫は、見た目だけでは判断できないことがあります。

そのため、皮膚検査、被毛や皮膚の確認、予防状況の確認が必要です。

食事や栄養管理を考える前に、まず寄生虫や感染など、治療が必要なものを見落とさないことが大切です。

〈アレルギー性の皮膚病〉

犬猫では、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、ノミアレルギーなどが皮膚症状に関係することがあります。

かゆみが続く。

耳の炎症を繰り返す。

足先をなめる。

口まわりが赤い。

お腹や脇をかゆがる。

季節によって悪化する。

このような場合、アレルギー性皮膚疾患を考えることがあります。

食物アレルギーが疑われる場合は、食事の内容を正確に整理する必要があります。

ただし、皮膚病のすべてを食物アレルギーで説明することはできません。

アレルギー、感染、皮脂、栄養状態、生活環境が重なっていることもあります。

〈内分泌疾患に関係する皮膚病〉

ホルモンの病気が皮膚に出ることもあります。

たとえば、甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症などでは、脱毛、皮膚の薄さ、色素沈着、感染を繰り返すなどの皮膚症状が見られることがあります。

かゆみが強くないのに毛が抜ける。

左右対称に脱毛する。

皮膚が薄い。

何度も感染を繰り返す。

体重、元気、飲水量、尿量、食欲にも変化がある。

このような場合は、皮膚だけでなく、全身状態や血液検査も確認する必要があります。

〈栄養性の皮膚病〉

皮膚病の中で見落とされやすいものが、栄養性の皮膚トラブルです。

皮膚は、栄養の影響を受けやすい臓器です。

なぜなら、皮膚や被毛は入れ替わりが早く、常に材料を必要としているからです。

タンパク質。

必須脂肪酸。

亜鉛。

銅。

ビタミンA。

ビタミンE。

ビタミンB群。

これらの栄養素は、皮膚や被毛の状態に関係します。

栄養性の皮膚トラブルでは、

・被毛がパサつく

・毛づやが悪い

・フケが多い

・皮膚が乾燥する

・皮膚がベタつく

・傷の治りが悪い

・毛が生えにくい

・皮膚炎を繰り返す

・耳のトラブルを繰り返す

といった症状が見られることがあります。

ただし、これらの症状だけで栄養不足と決めつけることはできません。

感染、寄生虫、アレルギー、ホルモン疾患などを確認しながら、食事内容も同時に見ていく必要があります。

〈栄養性の皮膚疾患が見落とされやすい理由〉

栄養性の皮膚疾患は、見落とされやすいことがあります。

理由はいくつかあります。

まず、皮膚症状が非特異的だからです。

赤み、かゆみ、フケ、脱毛、ベタつきは、さまざまな皮膚病で見られます。

栄養だけに特徴的な見た目ではありません。

次に、現代の市販フードを食べている犬猫では、典型的な重度の栄養欠乏は多くないと考えられているからです。

そのため、「総合栄養食を食べているなら栄養は問題ない」と判断されやすいことがあります。

しかし、ここで注意したいことがあります。

総合栄養食であることと、その子に最適であることは同じではありません。

消化吸収がうまくいっていない子。

食べる量が少ない子。

酸化した脂質の影響を受けている可能性がある子。

慢性炎症が続いている子。

皮膚の回復に必要な栄養が相対的に足りていない子。

手作りご飯のバランスが崩れている子。

このような場合は、栄養が皮膚に影響している可能性があります。

〈総合栄養食なら栄養は問題ない、で終わらせない〉

総合栄養食は、犬猫に必要な栄養素を満たすように設計されています。

その点は大切です。

しかし、実際の診療では、フードの表示だけでは分からないことがあります。

その子がどれくらい食べているのか。

おやつが多くないか。

開封後の保存状態はどうか。

脂質が酸化していないか。

下痢や嘔吐で吸収が落ちていないか。

体重や筋肉量は保てているか。

皮膚炎や外耳炎を繰り返していないか。

療法食を長期間使っていて、他の栄養面に偏りが出ていないか。

このような点を確認する必要があります。

フード名だけで判断するのではなく、食べ方、量、保存、体調、症状の経過まで見ることが大切です。

〈皮膚病の診断では、順番が大切〉

皮膚病では、診断の順番が大切です。

まず、緊急性や強い感染がないかを確認します。

次に、寄生虫、細菌、マラセチア、皮膚糸状菌などを確認します。

そのうえで、アレルギー、内分泌疾患、栄養状態、生活環境などを考えていきます。

診断では、次のような情報が役立ちます。

・いつから症状があるか

・どこがかゆいか

・季節性があるか

・耳の症状があるか

・便や嘔吐の症状があるか

・食事内容

・おやつの種類

・フードの保存方法

・シャンプーやスキンケアの内容

・ノミ・マダニ予防の状況

・過去に使った薬

・薬に対する反応

・同居動物や家族への皮膚症状の有無

皮膚だけを見て判断するのではなく、生活全体を見ることが大切です。

〈食事を確認する時に見ること〉

皮膚トラブルのある子では、食事について次の点を確認します。

・主食の種類

・食べている量

・開封後どのくらい経っているか

・保存方法

・おやつの種類と量

・サプリメントの有無

・手作りご飯の内容

・タンパク質源

・脂質の種類

・水分量

・便の状態

・体重変化

・皮膚症状とのタイミング

特に、ドライフードでは脂質の酸化も確認したい点です。

ドライフードは、製造、流通、保管、開封後の保存の過程で、脂質が酸化する可能性があります。

酸化した脂質を日常的に摂ることは、皮膚の炎症やバリア機能、被毛の状態に影響する可能性があります。

皮膚病を繰り返す子では、単にフードの種類だけでなく、脂質の質や保存状態まで見る必要があります。

〈手作りご飯では何に注意するか〉

手作りご飯は、食材、水分量、タンパク質源、脂質の種類を調整しやすい食事です。

皮膚や耳のトラブルを繰り返す子で、食事を見直す選択肢になることがあります。

ただし、手作りご飯も、自己流で長く続けると栄養バランスが崩れることがあります。

特に注意したいのは、

・タンパク質量

・脂質の質と量

・必須脂肪酸

・カルシウム

・亜鉛

・銅

・ヨウ素

・ビタミンD

・ビタミンE

・ナトリウム

です。

皮膚に良さそうな食材を足すだけでは、栄養設計としては不十分です。

手作りご飯では、全体のバランスを見ながら、その子に合った形にすることが大切です。

〈サプリメントだけで解決しようとしない〉

皮膚トラブルでは、オメガ3脂肪酸、亜鉛、ビタミン、乳酸菌などのサプリメントが使われることがあります。

適切に使えば役立つこともあります。

しかし、サプリメントだけで皮膚病を解決しようとすることはおすすめできません。

感染があるのに治療しない。

寄生虫がいるのに駆除しない。

アレルギーの管理をしない。

食事全体のバランスが悪いまま、一部の栄養素だけ足す。

このような状態では、うまくいかないことがあります。

サプリメントは、診断と食事全体の見直しの上に使うものです。

〈こんな場合は栄養面も見直したい〉

次のような場合は、皮膚だけでなく栄養面も確認したいです。

・皮膚炎を繰り返している

・外耳炎を繰り返している

・マラセチアと言われたことがある

・膿皮症を繰り返している

・毛づやが悪い

・フケが多い

・皮膚がベタつく

・皮膚が乾燥している

・傷の治りが遅い

・薬を使うとよくなるが、また繰り返す

・療法食を長く続けている

・手作りご飯を自己流で続けている

・おやつが多い

・下痢や嘔吐もある

・今の食事が合っているか不安

皮膚病を繰り返す子では、皮膚科治療と栄養管理の両方から見直すことが大切です。

〈当院での相談について〉

チップ宝塚動物栄養クリニックでは、犬猫の一般診療に加えて、食事や栄養管理の相談を行っています。

皮膚炎、外耳炎、マラセチア、膿皮症、かゆみ、ベタつき、フケ、毛づやの悪さなどについて、診察と食事管理の両面から確認します。

皮膚の状態だけでなく、食事内容、フードの保存方法、おやつ、便の状態、体重、既往歴、検査結果も含めて、その子に合った食事管理を考えます。

来院が難しい方や遠方の方は、オンライン相談・オンライン診療もご利用いただけます。

オンラインでは、写真、動画、検査結果、現在の食事内容を確認しながら、食事管理や受診の目安をご案内します。

ただし、強い炎症、痛み、感染、検査や処置が必要な場合は、来院またはお近くの動物病院での対面診療をご案内します。

〈まとめ〉

犬猫の皮膚病は、皮膚だけを見ても分からないことがあります。

感染、寄生虫、アレルギー、内分泌疾患、免疫、生活環境、食事、栄養状態など、さまざまな要因が関係します。

栄養性の皮膚トラブルは、見落とされやすいことがあります。

総合栄養食を食べているから大丈夫、手作りご飯だから安心、という単純な話ではありません。

その子が何を、どのくらい、どのように食べているか。

その食事が、皮膚や被毛を支える内容になっているか。

皮膚病を繰り返す場合は、皮膚だけでなく、毎日の食事と栄養状態まで含めて見直してみてください。