【予防できる病気を予防するために。犬猫の食事と毎日の健康管理】

動物病院は、病気になってから行く場所。
そう思われることが多いかもしれません。
もちろん、体調が悪い時、痛みがある時、検査や治療が必要な時には、動物病院での診察が必要です。
しかし、本当に大切なのは、病気になってから慌てることだけではありません。
予防できる病気を、できるだけ予防すること。
毎日の生活の中で、病気になりにくい体を作ること。
そのために、食事、体重、運動、排泄、皮膚、耳、口、シニア期への準備を見直すことが大切です。
〈予防とは、ワクチンだけではありません〉
犬猫の予防というと、ワクチン、フィラリア予防、ノミ・マダニ予防を思い浮かべる方が多いと思います。
これらはとても大切です。
感染症や寄生虫から犬猫を守るために、必要な予防医療です。
しかし、予防はそれだけではありません。
日々の食事管理。
体重管理。
歯周病の予防。
皮膚や耳のケア。
尿や便の変化に気づくこと。
シニア期に向けて筋肉を維持すること。
これらも、広い意味ではすべて予防です。
動物病院で行う予防と、ご家庭で毎日行う予防。
その両方が必要です。
〈毎日の食事は、いちばん身近な予防です〉
犬猫の体は、毎日の食事から作られています。
皮膚も、被毛も、筋肉も、血液も、免疫に関わる細胞も、食事から入ってくる栄養素を材料にしています。
だからこそ、食事は健康管理の土台です。
何を食べているか。
どのくらい食べているか。
水分は足りているか。
タンパク質は足りているか。
脂質の質はどうか。
ミネラルやビタミンに不足はないか。
体質や病歴に合っているか。
これらは、日々の体調に関わります。
「今、病気ではないから食事は何でもよい」
というものではありません。
元気な時から食事を整えることが、将来の病気を防ぐための一歩になります。
〈体重管理は、病気の予防につながります〉
犬猫の肥満は、さまざまな病気のリスクに関わります。
関節への負担。
呼吸への負担。
糖代謝への影響。
皮膚や耳のトラブル。
麻酔や手術時のリスク。
シニア期の介護負担。
体重が増えすぎると、日常生活の質にも影響します。
一方で、痩せすぎも問題です。
特に猫やシニアの犬猫では、体重減少や筋肉量の低下が見逃されることがあります。
食べているのに痩せる。
背中や腰まわりが骨ばってきた。
後ろ足の筋肉が落ちてきた。
ジャンプや階段が苦手になった。
このような変化は、早めに気づきたいサインです。
体重管理は、単に太らせないことではありません。
その子にとって適切な体重と筋肉を保つことです。
〈皮膚や耳のトラブルも、早めに見る〉
皮膚炎、外耳炎、マラセチア、かゆみ、ベタつき、耳のにおい。
これらは、命にすぐ関わる病気ではないと思われがちです。
しかし、繰り返す皮膚や耳のトラブルは、犬猫にとって大きなストレスになります。
かゆい。
眠れない。
舐め続ける。
耳を振る。
においが強くなる。
薬を使うとよくなるけれど、また繰り返す。
このような状態では、皮膚や耳だけでなく、食事、皮脂、皮膚バリア、体質、生活環境まで含めて見る必要があります。
繰り返してから対処するのではなく、早い段階で原因を考えることが大切です。
〈便と尿は、毎日見られる健康情報です〉
ご家庭で毎日確認できる大切な情報があります。
それが、便と尿です。
便の硬さ。
回数。
色。
におい。
粘液や血液の有無。
尿の量。
尿の回数。
色。
におい。
排尿時の様子。
これらは、体の状態を知る手がかりになります。
下痢や嘔吐を繰り返している。
便がいつも柔らかい。
尿の回数が増えた。
トイレに何度も行く。
尿の色が濃い。
水を飲む量が増えた。
こうした変化は、食事や体調、内臓疾患、尿路疾患と関係することがあります。
特に猫では、尿の変化はとても重要です。
早めに気づくことが、重症化を防ぐことにつながります。
〈歯周病も、予防したい病気です〉
犬猫では、歯周病もとても多い病気です。
口のにおい。
歯石。
歯ぐきの赤み。
よだれ。
口を痛がる。
硬いものを嫌がる。
片側で噛む。
食べ方が変わる。
こうしたサインがある場合、口の中に痛みや炎症があることがあります。
歯周病は、口の中だけの問題ではありません。
慢性的な炎症は、体全体に影響する可能性があります。
また、口が痛いと、食欲や栄養状態にも影響します。
毎日の食事管理と同じように、口腔ケアも予防の一部です。
〈シニア期は、元気なうちから準備する〉
シニア期のケアは、老犬・老猫になってから急に始めるものではありません。
筋肉を保つ。
体重を急に落とさない。
食べられる食事を増やしておく。
消化しやすい食事を考える。
水分をしっかり摂る。
口腔ケアをしておく。
皮膚や耳のトラブルを放置しない。
定期的に検査を受ける。
こうした積み重ねが、シニア期の生活の質につながります。
若い頃と同じ食事を続けていればよいとは限りません。
年齢、活動量、筋肉量、病気の有無、食欲、消化力に合わせて、食事を見直すことが大切です。
〈予防できる病気を予防すること〉
すべての病気を防ぐことはできません。
体質、遺伝、年齢、偶然によって起こる病気もあります。
どれだけ気をつけていても、病気になることはあります。
だからこそ、予防できるものは予防したいのです。
ワクチンで防げる病気。
フィラリア予防で防げる病気。
ノミ・マダニ予防で防げる病気。
肥満によって悪化しやすい病気。
食事管理でリスクを下げられる可能性がある病気。
口腔ケアで進行を遅らせられる病気。
早期発見で治療の選択肢が増える病気。
これらを一つずつ減らしていくことが、予防医療です。
病気になってから治すことだけが医療ではありません。
病気になる前から整えることも、医療の大切な役割です。
〈食生活は、毎日の積み重ねです〉
食事は、1回で体を変えるものではありません。
毎日の積み重ねです。
今日食べたもの。
昨日食べたもの。
この1か月食べてきたもの。
この数年続けてきたもの。
それが少しずつ体に影響します。
皮膚。
被毛。
便。
尿。
筋肉。
体重。
食欲。
元気。
シニア期の体力。
食生活は、目に見えないところで体を支えています。
だからこそ、食事を軽く見ないことが大切です。
〈手作りご飯も、フードも、目的は同じです〉
当院では、犬猫の手作りご飯の相談を行っています。
ただし、手作りご飯だけを押しつけるためではありません。
大切なのは、その子に合った食事を考えることです。
手作りご飯が合う子もいます。
ウェットフードが使いやすい子もいます。
療法食が必要な子もいます。
ドライフードを完全にやめられない子もいます。
ご家庭の事情、犬猫の好み、病気、年齢、食欲、続けやすさによって、現実的な方法は変わります。
食事管理は、理想論だけでは続きません。
その子とご家族が続けられる形にすることが大切です。
〈こんな時はご相談ください〉
・今の食事が合っているか知りたい
・手作りご飯を始めたい
・療法食を食べない
・皮膚や耳のトラブルを繰り返している
・下痢や嘔吐を繰り返している
・体重が増えてきた
・体重が減ってきた
・シニア期の食事を見直したい
・病気になる前から食事を整えたい
・予防として何をすればよいか知りたい
不調がはっきり出てからではなく、少し気になる段階で相談していただいて大丈夫です。
〈当院での相談について〉
チップ宝塚動物栄養クリニックでは、犬猫の一般診療、予防、栄養相談、手作りご飯外来を行っています。
病気になってからだけでなく、元気な時から食事や生活を整えることを大切にしています。
食事内容、体重、便、尿、皮膚、耳、口腔、シニア期への準備などを一緒に確認し、その子に合った健康管理を考えます。
来院での相談に加えて、遠方の方や来院が難しい方には、オンライン相談・オンライン診療も行っています。
毎日の食事や体調管理について、不安なことがあればご相談ください。
〈まとめ〉
予防は、ワクチンや寄生虫予防だけではありません。
毎日の食事、体重管理、口腔ケア、皮膚や耳の管理、便や尿の確認、シニア期への準備も、すべて予防につながります。
すべての病気を防ぐことはできません。
しかし、予防できる病気を予防することはできます。
犬猫が美味しく、楽しく、長く一緒に暮らすために。
元気な時から、毎日の食事と健康管理を一緒に考えていきましょう。


