慢性腎臓病のときの食事管理

犬猫の慢性腎臓病では、食事管理がとても大切になります。
ただし、腎臓病の食事管理は、
「たんぱく質を減らせばよい」
という単純なものではありません。
腎臓病では、血液検査の数値だけでなく、
食欲、体重、筋肉量、尿の状態、血圧、脱水の有無、リンの値などを見ながら、
その子に合った食事を考えていく必要があります。
特に猫では、慢性腎臓病がシニア期に多く見られます。
犬でも、年齢、体質、持病、過去の腎障害などによって慢性腎臓病が問題になることがあります。
腎臓病は、食事だけで治す病気ではありません。
しかし、食事管理によって、体への負担を減らしたり、
食欲や体重を保ったり、
生活の質を支えたりすることはできます。
【腎臓病の食事管理で大切なこと】
腎臓病の食事管理で大切なことは、ひとつではありません。
・リンを摂りすぎないこと
・必要なエネルギーを確保すること
・たんぱく質を減らしすぎないこと
・筋肉量を落とさないこと
・水分をしっかり摂ること
・食べ続けられる内容にすること
・血液検査や尿検査を見ながら調整すること
この中でも、特に重要なのがリンの管理です。
リンは、腎臓病の進行や体調に関係する重要な栄養素です。
腎臓病用の療法食では、たんぱく質だけでなく、
リンの量が調整されています。
そのため、腎臓病の食事管理では、
たんぱく質の量だけを見るのではなく、
リン、カロリー、水分、脂質、ミネラルのバランスを合わせて見る必要があります。
【たんぱく質は、減らせばよいわけではありません】
腎臓病と聞くと、
「たんぱく質を減らす」
というイメージを持たれる方が多いと思います。
たしかに、腎臓病のステージや尿毒症症状の有無によっては、
たんぱく質量の調整が必要になることがあります。
しかし、たんぱく質を減らしすぎると、
筋肉量が落ちたり、
体力が低下したり、
食欲が落ちたりすることがあります。
特にシニアの犬猫では、もともと筋肉量が落ちやすくなっています。
その状態で過度にたんぱく質を減らすと、
腎臓への配慮をしているつもりが、
体全体の維持には不利になることがあります。
腎臓病の食事管理では、
「たんぱく質を減らすかどうか」
だけではなく、
どの程度調整するのか、
どのたんぱく源を使うのか、
今の体重や筋肉量に合っているのかを見ていくことが大切です。
【食べない腎臓病食は、意味がありません】
腎臓病用の療法食は、食事管理の選択肢として有用です。
うまく食べられる子では、
リンやたんぱく質、ミネラルの管理がしやすくなります。
一方で、腎臓病の子では食欲が落ちやすいことがあります。
吐き気がある子。
においに敏感な子。
ドライフードを食べにくくなった子。
同じ食事に飽きやすい子。
シニア期で食べる量が減ってきた子。
このような場合、
理論上よい食事であっても、
食べられなければ体を維持できません。
腎臓病の食事管理では、
「腎臓に配慮した内容であること」
と同じくらい、
「その子が食べられること」
が大切です。
食べないまま様子を見ると、
体重や筋肉量が落ちてしまいます。
腎臓病では、食事内容だけでなく、
食べる量、食欲、体重変化を一緒に見る必要があります。
【水分は、腎臓病の食事管理で重要です】
腎臓病の犬猫では、水分管理も大切です。
慢性腎臓病では、多飲多尿が見られることがあります。
尿として水分が出ていきやすくなるため、
体の水分バランスが崩れやすくなります。
そのため、食事から自然に水分を摂れることは大きな利点です。
ウェットフードや手作りご飯は、
ドライフードに比べて食事中の水分量を増やしやすい食事です。
もちろん、水分を増やせば腎臓病が治るわけではありません。
しかし、脱水を避けること、
食事から水分を摂りやすくすることは、
腎臓病の子の生活を支えるうえで大切な視点です。
【手作りご飯でも、腎臓病の食事管理はできます】
腎臓病の食事管理というと、
療法食しか選択肢がないと思われることがあります。
しかし、食事設計を行えば、
手作りご飯でも腎臓病の食事管理はできます。
ただし、自己流で
「肉を減らす」
「野菜を増やす」
「薄味にする」
だけでは、腎臓病の食事管理にはなりません。
腎臓病の手作りご飯では、
・リンの量
・たんぱく質の量と質
・エネルギー量
・脂質量
・水分量
・カリウムやナトリウムなどのミネラル
・体重と筋肉量
を見ながら設計する必要があります。
腎臓病では、
食材の見た目だけで判断することが難しいです。
たとえば、体に良さそうに見える食材でも、
リンが多い場合があります。
逆に、腎臓に配慮するためにたんぱく質を減らしすぎると、
筋肉量や食欲の維持が難しくなることもあります。
手作りご飯は、食材や水分量、脂質量、たんぱく源を調整しやすいことが利点です。
一方で、腎臓病では栄養設計がとても重要になるため、
長く続ける場合は、検査結果と体調を見ながら調整することが大切です。
【腎臓病では、検査結果と食事を一緒に見ます】
腎臓病の食事管理では、
血液検査の腎臓の数値だけを見るのではなく、
複数の情報を合わせて考えます。
確認したい内容は、次のようなものです。
・BUN
・クレアチニン
・SDMA
・リン
・カルシウム
・カリウム
・尿比重
・尿たんぱく
・血圧
・体重
・筋肉量
・食欲
・嘔吐や吐き気
・便の状態
同じ腎臓病でも、
リンが高い子、
食欲が落ちている子、
筋肉量が落ちている子、
尿たんぱくが問題になる子、
脱水しやすい子では、
食事管理の優先順位が変わります。
そのため、
腎臓病の食事管理は、
一度決めたら終わりではありません。
検査結果と体調の変化に合わせて、
見直していく必要があります。
【腎臓病の食事相談について】
チップ宝塚動物栄養クリニックでは、
犬猫の一般診療に加えて、
栄養相談、手作りご飯外来、オンライン相談を行っています。
慢性腎臓病の食事について、
「腎臓病用の療法食を食べてくれない」
「手作りご飯で腎臓病の管理をしたい」
「たんぱく質をどこまで減らすべきか分からない」
「リンの管理が分からない」
「体重や筋肉が落ちてきて心配」
「食べられるものが限られている」
このような場合は、
現在の検査結果、食事内容、体重、筋肉量、食欲、生活の様子を確認しながら、
その子に合った食事管理を考えていきます。
腎臓病の食事管理は、
「制限すること」だけが目的ではありません。
その子が食べられること。
体重と筋肉を保つこと。
水分を摂りやすくすること。
検査結果を見ながら調整すること。
そして、毎日の生活をできるだけ穏やかに続けられること。
これらを大切にしながら、
その子に合った食事を考えていきます。
初診をご希望の方は、初診予約ページからご予約ください。
遠方の方や来院が難しい方は、オンライン相談もご利用いただけます。


