膵炎のときの食事管理

犬猫の膵炎では、吐き気、嘔吐、食欲不振、腹痛、元気消失、下痢などが見られることがあります。

膵炎は、食事だけで治す病気ではありません。

痛み止め、吐き気止め、点滴、検査、全身状態の管理などが必要になることがあります。

その一方で、膵炎の治療では食事管理もとても大切です。

特に近年では、以前のように長く絶食させるのではなく、状態を見ながら、なるべく早期に栄養を入れていく考え方が重視されるようになっています。

【昔は絶食が基本とされていました】

以前は、膵炎の治療では、

「膵臓を休ませるために絶食する」

という考え方が一般的でした。

たしかに、強い嘔吐があるときや、食べることで状態が悪化するように見えるときには、無理に食べさせることはできません。

しかし、長く食べない状態が続くと、体力が落ちます。

腸の粘膜も使われにくくなり、消化管の機能にも影響します。

特に猫では、食べない状態が続くと肝リピドーシスのリスクも問題になります。

そのため、現在では、吐き気や痛みを管理しながら、食べられる状態を作り、できるだけ早く栄養を入れることが大切だと考えられています。

【早期に食べることが大切と考えられる理由】

膵炎のときに早期の栄養管理が大切とされる理由は、単にカロリーを入れるためだけではありません。

食べることは、腸を使うことでもあります。

腸に栄養が入ることで、腸粘膜や腸内環境の維持にもつながります。

人の急性膵炎では、経腸栄養が重視されるようになっており、犬猫でも同じように、可能な範囲で消化管を使う栄養管理が注目されています。

犬の重度急性膵炎を対象にした報告では、早期の経腸栄養が許容され、完全静脈栄養より合併症が少なかったとされています。

また、犬の急性膵炎または急性増悪例を対象にした報告では、入院後48時間以内に給餌を開始した群で、自発採食への回復に良い影響が示されています。

猫の膵炎についても、ACVIMのコンセンサスでは、急性膵炎の猫では、経口またはチューブによる経腸栄養を早期に開始することが推奨されています。

つまり、膵炎だからといって、ただ長く食べさせないことがよいとは限りません。

大切なことは、吐き気や痛みを管理しながら、その子が受け入れられる形で栄養を入れていくことです。

【なぜ低脂肪食が使われるのか】

犬の膵炎では、低脂肪の消化器用療法食が使われることがあります。

これは、脂肪が膵臓への刺激に関わるためです。

脂肪の多い食事は、消化の過程で膵液の分泌に関係するホルモン反応を起こしやすく、膵炎の犬では負担になることがあります。

また、犬では高脂肪食が膵炎の発症や悪化に関係すると考えられています。

そのため、膵炎の犬では、特に治療初期や再発予防の場面で、低脂肪で消化しやすい食事が選ばれることがあります。

ただし、すべての犬猫に同じ低脂肪食が合うわけではありません。

猫の膵炎では、犬ほど単純に脂肪制限だけで考えないこともあります。

猫では、食べないこと自体のリスクが大きいため、まず食べられること、必要な栄養を入れることが重要になります。

犬と猫では、膵炎の背景や食事管理の考え方が少し異なります。

【膵炎の食事管理で見るポイント】

膵炎の食事管理で大切なことは、いくつかあります。

・脂質量を抑えること

・消化しやすい内容にすること

・水分を摂りやすくすること

・少量ずつ、回数を分けること

・吐き気や痛みを管理したうえで食べること

・食欲や便の状態を見ながら調整すること

・基礎疾患や併発疾患も一緒に考えること

特に犬では、低脂肪、高消化の食事が選ばれることが多いです。

一方で、脂肪を下げることだけを優先しすぎて、食べられない、カロリーが足りない、たんぱく質が不足する、という状態になるのはよくありません。

膵炎の食事管理では、脂質を抑えることと、体を維持することの両方を考える必要があります。

【手作りご飯は低脂肪にしやすい食事です】

膵炎の食事管理では、手作りご飯が合うことがあります。

理由のひとつは、低脂肪に調整しやすいことです。

使う肉の部位を選ぶ。

皮や脂身を外す。

調理で脂を落とす。

脂質の多い食材を避ける。

食材の量を細かく調整する。

このような調整は、手作りご飯の得意なところです。

もうひとつの利点は、水分を入れやすいことです。

膵炎の子では、嘔吐や食欲不振で水分が不足しやすくなることがあります。

手作りご飯は、食事そのものに水分を含ませやすく、ドライフードよりも自然に水分を摂りやすい食事です。

また、やわらかくしたり、少量ずつ与えたり、香りや温度を調整したりしやすいことも利点です。

食欲が落ちている子では、こうした小さな工夫が食べやすさにつながることがあります。

【手作りなら何でもよいわけではありません】

ただし、膵炎の子に手作りご飯を与える場合、自己流で何となく作ることはおすすめしません。

たとえば、

「ささみだけなら大丈夫」

「野菜を多くすればよい」

「油を入れなければよい」

という単純な考え方では、長期的な栄養管理としては不十分になることがあります。

膵炎の子では、

・脂質量

・たんぱく質量

・エネルギー量

・水分量

・食材の消化性

・食事回数

・体重の変化

・便や嘔吐の状態

を見ながら調整する必要があります。

低脂肪にしようとしてエネルギーが足りなくなると、体重や筋肉が落ちてしまいます。

食べやすいからといって、同じ食材だけを長く続けると、栄養バランスが崩れることがあります。

膵炎の食事管理では、低脂肪であることだけでなく、その子が回復し、体を維持できる内容であることが大切です。

【療法食と手作りご飯は対立するものではありません】

膵炎の治療では、低脂肪の消化器用療法食が使われることがあります。

これは、膵炎の犬で脂質を抑え、消化しやすく、治療中に使いやすいように設計されているためです。

状態によっては、療法食がとてもよい選択肢になります。

一方で、

療法食を食べてくれない。

ドライフードを食べにくい。

水分をもっと摂らせたい。

脂質量をさらに細かく調整したい。

ほかの持病もある。

このような場合には、手作りご飯で管理する選択肢もあります。

大切なのは、療法食か手作りご飯かを対立させることではありません。

その子の状態に合う形で、低脂肪、高消化、水分、食欲、栄養バランスを整えることです。

【膵炎の食事相談について】

チップ宝塚動物栄養クリニックでは、犬猫の一般診療に加えて、栄養相談、手作りご飯外来、オンライン相談を行っています。

膵炎の食事管理について、

「低脂肪食にしたいが、何を選べばよいか分からない」

「膵炎後に何を食べさせてよいか不安」

「療法食を食べてくれない」

「手作りご飯で低脂肪にしたい」

「再発が心配」

「ほかの病気もあり、食事の選び方が難しい」

このような場合は、現在の体調、検査結果、食欲、便や嘔吐の状態、体重、これまでの食事内容を確認しながら、その子に合った食事管理を考えていきます。

膵炎の食事管理では、ただ食事を制限することが目的ではありません。

吐き気や痛みを管理しながら、食べられる状態を作ること。

低脂肪で消化しやすい内容にすること。

水分を摂りやすくすること。

少量ずつ、無理なく栄養を入れていくこと。

そして、回復後も再発に配慮しながら、その子が続けられる食事を考えることが大切です。

初診をご希望の方は、初診予約ページからご予約ください。

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【参考文献】

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